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北へ。アンソロジー

​<北へ。White Illumination Fight(WIF)

北へ。White Illumination Fight(WIF)

北へ。WIF×DDF 葉野香vs京子

 WIF×DDF……それは、WI・DDのキャラ達が激しくぶつかり合い、北へ。の頂点を目指して戦う北へ。本編とは少し違った別のお話……。
 
 ここは札幌ドーム。本日のWIF×DDFの会場である。
「皆様、大変お待たせしました!ただ今よりWIF×DDF一回戦第一試合を開催します。解説はわたし、原田明理が務めさせていただきます。よろしくお願いします」
 場内は開催の合図とともに歓声の渦に飲み込まれる。凄い熱気だ。
「さて、盛り上がってきたところで選手の入場です。赤コーナー、朝比奈京子選手入場です。いらっしゃいま……じゃなくて、どうぞ~。(やっちゃった……)」
 合図とともに京子が入場する。
「続きまして、青コーナー左京葉野香選手入場です。どうぞ~」
 同様に葉野香も入場する。
「それでは両者中央へ」
 明理のその言葉で二人は闘技場の中央へ歩み寄る。
「ではルールを説明します。噛み付き、目潰し以外は基本的に何でもありです。相手が戦闘不能になるかギブアップした時点で試合は終了です。お二人ともよろしいですか?」
 二人はコクリと首を縦に振る。
「それではWIF×DDF、第一試合レディーゴー!!(は、恥ずかしいなぁ・・・)」
 カァーン!
 試合開始のゴングが鳴り響いた。
 両者は中央で見つめ合ったまま動かない……。
「ひとつ確認させて。あなた、眼帯したままでわたしに勝てると思ってるの? 外した方がいいわよ」
「ふん、随分余裕だね。あんたこそ、その眼鏡のレンズはちゃんと合ってるんだろうね?」
 バチバチと見えない火花が二人の前を飛び交う。
「フフ、あなた自身で試してみるといいわ。どこからでもかかってらっしゃい」
「わたしも軽く見られたものだね(こいつ、長い髪といい、その強気な自信たっぷりな性格といい、キャラが被るんだよ。やりにくいったらありゃしない……)。それじゃ、こっちから行くよ。北海拳を甘く見るんじゃないよ!」
 右足で強く地面を蹴り、勢い良く京子に飛びかかる。
「先制攻撃は左京葉野香選手です。さあ、朝比奈京子選手どう出るでしょうか??」
 葉野香の激しいパンチのラッシュが京子に襲いかかる。
「これだけのガトリングパンチ、見切れるかい? 喰らいなよ!」
「フフ、見え透いた手ね。この程度なら余裕でかわせるわ」
 京子は軽やかな身のこなしで葉野香のパンチをかわす。
「す、凄いです。朝比奈選手、無数のパンチの雨を紙一重でかわしています」
「ひとつ確認させて。あなた、それが本気ならわたしには勝てないわよ。まさか本気じゃないでしょうね?」
「フン、挑発のつもり? でもその手には乗らないよ。それに今のはほんの挨拶代わりだよ」
「それを聞いて安心したわ(フ、割と冷静ね)。じゃぁ、今度はこちらから行くわよ!」
「おっと、今度は攻防一転、朝比奈選手の攻撃です。左京選手どう迎え撃つのでしょうか?」
 京子はその長い足のリーチを利用して葉野香を攻撃する。それを葉野香が巧みに避ける。
「これはどうかしら?」
 強烈なハイキックが葉野香の顔面に襲いかかる……。
「くっ!!」
 たまらず右手でガードしようとした時だった。
「(よし、ボディが開いた!)かかったわね!」
 顔面を狙っていたハイキックが急に軌道を変える! そして次の瞬間、葉野香のボディにヒットした。
「ぐっ!」
 葉野香の身体がくの字に曲がり、吹っ飛ぶ。それと同時に爆煙が舞い上がる……。
 目の前には瓦礫の山が築かれている。それが今の一撃の破壊力を物語っている。
 ガラッ……。
 瓦礫の中から葉野香が姿を現す……。
「くっ、あんた思った以上にやるね。油断したよ」
「フッ、あなたもね……。その言葉そっくりあなたに返すわ」
「?? どういう意味なのでしょうか?」
 明理には今の会話の内容が理解出来ていないようで、頭上には?マークが浮かび上がっている。
 そこに先程の攻撃時のVTRが流れた……。京子の左ハイキックが葉野香の顔面にヒットするかと思った瞬間、軌道が変わり、葉野香の右ボディをとらえる。そして葉野香の身体がくの字に曲がる。次の瞬間、のけ反りながらも葉野香の蹴りが京子の右頬をかすめていたのだ。
「わぁ、凄いですねぇ。わたしには全然分かりませんでした。っとそんなことを言ってる間にも両者激しく戦っています!」
 両者は一歩も譲らず激しくぶつかり合う……。
 しかし、お互い決定打がなかなかヒットしないでいる。いわゆる膠着状態である。
「ちっ、仕方ない……。あれを出すか」
 そう言うと葉野香は後方へジャンプし京子との距離を取った。そして、右の拳にすべての気を集中させる……。
 ピシッ、パキッ……。
 それに反応するように葉野香の周りの大気が震え、小さな小石が弾け飛ぶ……。
「はあぁぁ……、手加減はしないよ、覚悟しな」
 葉野香の右拳がオーラを発し、紅く光る。
「望むところよ。防ぎきってみせるわ」
 京子は大きく一度深呼吸し、身構える。
「それじゃ、遠慮なくいくよ! 喰らえ、北海拳奥義! 時計台留根算酢(ルネッサンス)!!」
 次の瞬間、目の前から葉野香の姿が消えた。正確には目にも止まらぬ速さで動いているのだが、一般人にはあまりのスピードのため目がついていかないのである。
「来た! (速い! 間に合うか!)」
 京子は防御体制を取る。
「もらった!!」
 葉野香の拳が京子の左胸を撃ち貫く。
 ドン!!!!
 凄まじい音とともに辺り一帯が爆風の渦に飲み込まれた……。
「あうぅ、凄い破壊力ですぅ、一体どうなったのでしょうか? 砂煙が凄いので全く見えません……」
 何が起こったのか、砂煙がひどいため状況が把握できないでいる。
「よし、確実に手ごたえはあった。あれをまともに喰らえばいくらなんでも無事じゃ済まないよ」
 砂煙が巻き起こっているところから少し離れた位置に葉野香の姿が見える。
 そして、砂煙が徐々に晴れてゆく……。
「なっ、馬鹿な……」
 晴れてゆく砂煙の中に葉野香が見たものは、衣服には多少の傷があるものの、身体は全く無傷な京子の姿だった。
「一体どうして? 手ごたえはあったはず……なのに」
 驚きを隠せない葉野香。
「フフ、三秒ルール発動。結構いい攻撃だったけどわたしの三秒ルールの前にはどんな攻撃も無意味だわ……」
 京子はパンパンと身体の埃を軽く払いながら言った。
「攻撃を無効化した……? そんな馬鹿な……」
「フッ、でもこれは現実よ。受け止めたくないでしょうけどね。さぁ、攻撃が全く効かない相手にあなたはどう戦うのかしら?」
「くっ、もう一度だ、喰らえ! 時計台留根算酢!!」
 再び猛スピードの一撃が京子を襲う。
「無駄なことを……。三秒ルール発動!」
 ドス!!
 先程と同じく凄まじい音とともに砂煙が巻き上がる……。
 …………。
「今度はどうだ!」
 砂煙が徐々に晴れてゆく……。
「どう? 何度やっても無駄だってことが分かったかしら? 攻撃するだけあなたの体力がなくなっていくわよ」
 やはりそこには無傷の京子の姿があった。
「これは驚きですねぇ、朝比奈選手全くダメージを受けていません。三秒ルールは無敵なのでしょうか?」
「ハァ、ハァ……(クソッ、あいつの言う通りこのままじゃこっちの体力が削られていくだけだ。どうすれば……? あの技にも必ず弱点はあるはずだ)」
「どうしたのかしら? 何もしないのならこっちから行くわよ!」
 京子がここぞとばかりに反撃に出る。
「これでも喰らいなさい!」
「ぐっ、このままじゃヤバイ……」
 京子の攻撃が徐々にだが確実に葉野香を捕らえだした。
 防戦一方の葉野香……。だんだんと息使いが荒くなる。
 京子は休むことなく攻撃を続ける。
「ほら!!」
 強烈な蹴りが葉野香目がけて放たれる。
 間一髪、避けると同時に一度距離を取る葉野香。
「ちっ、ここはもうこれを使うしかないようだね。(これは一か八かの賭けだ、これを発動させるとタダですら残り少ない体力をさらに使っちまう……でもこれしかない!)
「どうやら覚悟が決まったようね? でもその様子じゃ降参する気はないようね?」
「当然! 必ず突破口を開いてみせるよ!」
「フフ、そういうのって嫌いじゃないわ。あなたやっぱり見所あるわ」
「そういうあんたもね! いくよ! 裏北海拳奥義! 北海眼開眼!!」
 葉野香は右目の眼帯を外した。それと同時に紅い眼光が鋭く輝く。
 ゴゴゴゴ~!!
 葉野香の周りから今までとは異質のオーラが溢れ出している。
「一体何をする気? (今までとオーラの質が変わった!?)」
「知れたことだよ。攻撃あるのみ! 攻撃は最大の防御ってね!! (何とか弱点を見つけるんだ)」
 今までとは比べ物にならない程の超スピードで京子に向かって突っ込む葉野香。
「いくらスピードが上がったからって無駄よ。このガードは崩せないわ」
「それは防ぎ切ってから言うんだね! 行くよ!」
 凄まじいスピードで葉野香のラッシュが京子に襲いかかる。しかし、京子はそれを紙一重でかわしている。
「フッ、これぐらいの攻撃、三秒ルールを使うまでもないわ」
「(やはりそうか! じゃぁ、もう一度これなら……)喰らえ、時計台留根算酢!」
「三度目の正直ってやつかしら? でも無駄よ。三秒ルール発動!!」
 やはり葉野香の必殺技である時計台留根算酢は三秒ルールの前には無意味だった……。
「やっぱり……」
「その通りよ、これで分かったでしょ? すべてが無駄だってことがね」
「ふふ、その逆だよ。分かったんだよ! 弱点がね!」
「弱点? フン、ハッタリね。この三秒ルールを破れるはずがないわ」
「確かにその三秒ルールは完璧さ。おそらく破ることはできない。でもあたしはあんたを倒す。それを今から証明してみせるよ」
「ひとつ確認させて。破ることができないのにわたしを倒せるのかしら? あなたのセリフは矛盾しているわ」
「やってみれば分かるよ。そろそろ終わりにさせてもらうよ(実際もう体力がほとんど残っていないしね)」
「そうね、決着をつけるわよ」
 今までに無い緊張感が周囲に充満する。観客は静まり返っている。
 明理に関しては実況を忘れてオロオロしている。
 全身に紅いオーラを纏った葉野香が再び京子に向かって襲いかかる。
「これで決める! 裏北海拳最終奥義! ススキノ雨の25時!!」
 それは一瞬の出来事だった……。時間にしてほんの数秒だろう。
 次の瞬間、京子の膝がガクンと落ち、地面に跪くと同時に無数の血飛沫が舞う。
 三秒ル-ルは……発動していない……。
「な、馬鹿な……。こんなことが!」
「あわわ、一体何が起こったのでしょうか? VTRで確認して見ましょう」
 久々に明理が口を開く。そしてスクリーンには先程の戦闘シーンがスローモーションで映し出される。
 そこには葉野香の凄まじいスピードの突きが映し出されていた。
 まず一撃目の突きが京子の左胸あたりにヒットしている。その瞬間、京子は三秒ルール発動モーションに入ろうとしているのが確認できる。
 しかし、間髪入れずに葉野香の鋭い突きが全部で24発繰り出されている。最初の一発と合わせて25発もの突きが京子にヒットしていたのである。
「やはり思った通りだったよ。確かにあんたの三秒ルールは完璧だよ。だけどそれは発動したらの話……。時計台留根算酢のような一撃必殺の単発の技に対しては完璧に効果を発揮している。だけど、ラッシュ技に対してはどういう訳かあんたは三秒ルールを発動させずに避けることに専念していた……。それで分かったのさ、発動させないんじゃなく、発動できないってことがね。おそらくその技を発動させるには詠唱時間みたいなものが必要なんだろ? だからラッシュ技には対応できないんだ。」
「ぐっ……。まさか、短時間でそこまで見抜いていたとはね……。油断したわ」
 京子は震える膝を必死に抑えながら何とか立ち上がった。
「全くとんでもない奴だね。あの技を喰らって立ち上がってこれたのはあんたが初めてだよ。でもどうやら立っているのがやっとのようだね、今度こそこれで最後だよ!」
 何とか立ち上がった京子めがけて容赦なく葉野香の攻撃が襲いかかる。
「こいつで……ダウンだ!」
 ブン!!
 風邪を切る音と共に強烈な突きが繰り出される。
 ガクン! 京子の膝が再び落ち、地面に跪く……。
 しかし、葉野香の突きがヒットしたからではない。虚しく空を切る葉野香の一撃……。
「フフ、ホントの切り札というのは最後の最後まで取っておくものよ! ボディがガラ空きよ、喰らいなさい! 必殺! 甘夏デイト!!」
 オレンジ色に輝いた京子の拳が葉野香のボディに深く突き刺さる。
「ぐっ、あぁ……」
 葉野香はその場に崩れ落ちる……。
「ハァ……勝負あり、かしら?」
「ハァ、ハァ……クソ! 最後の最後にしてやられたよ。クッ、肋骨が何本か持っていかれちまったみたいだね。悔しいけどあたしの負けだよ……」
「えっと、ここで左京選手ギブアップです。ということは勝者は朝比……」
 明理が勝者の名を告げようとしたときだった……。
「ひとつ確認させて。確かルールでは試合はどちらかが戦闘不能になるかギブアップするまでのはずよね?」
 明理の言葉を制し、京子が割って入った。
「はい、その通りですが……?」
「だったら見ての通りわたしも戦闘不能だわ。だからそのジャッジはおかしいんじゃないかしら?」
「あぁ、はいぃ、そう言われればそうですねぇ。困りましたねぇ?」
 明理は京子の言葉でパニくっている。
「黙っていればあんたの勝ちだったものを……」
「そうね、だけどこんな勝ち方したってうれしくないでしょ? あなたが同じ立場でもこうするでしょ?」
「フフ、確かにね。でも次はこうはいかないよ」
「その言葉そっくりお返しするわ」
 場内がワァ~っと歓声で湧き上がる。二人の選手に対して拍手が送られる。
 そこに明理が申し訳なさそうに割って入る。
「あのぅ、このバトルはトーナメント戦なので勝者を決めないといけないのですが……」
「あら? ならあなたが代わりに出場すればいいじゃない?」
「そうだな、今日のバトルの審判をしたのも何かの縁だし、あんたが出るのがいいよ」
「それじゃ、次の試合、わたし達の分まで頑張ってね」
 二人はそういい残して控え室に立ち去った……。
「えっ、わたしがですか? それはもっけ幸いです……じゃなくて! 困りますよ~。二人共待って下さいよ~!」
 
 NEXT BATTLE 原田明理出場決定!?
 
 終幕
 
 
 あとかきという名のいいわけ

 皆様こんばんは、sayです。
 「北へ。WIFキャラ技一覧」に続き、今回は葉野香vs京子を書かせていただきました。
 実はこのssは「北へ。WIFキャラ技一覧」と同様に今から17年前に作っていたものです。そのため、今改めて読み返してみると、本当に拙い文章だなぁとお恥ずかしい限りです(まぁ今もあまり変わりませんがw)。ですが、敢えて誤字を修正しただけで当時のまま掲載しています。
 でも何と言いますか、当時はssというものを書き始めたばかりで、文章の書き方もルールもほとんど分からない状態でしたが、今以上に北へ。という作品が大好きで、どうにかして北へ。に関わっていたい! という気持ちが大きかったように思います。
 その当時はとにかく、北へ。WI、DDを何度も何度もプレイしていたので、各ヒロインの名シーンやセリフ、エピソードなどを鮮明に把握(記憶)していたので、それを参考にして「北へ。WIFキャラ技一覧」の技に反映させていきました。仮に今、DDヒロインで同じようなことを考えようと思うと、正直なところ記憶が薄れてしまっているところが多々あるので、出来るかどうか不安です(笑)
 万が一、希望する方がいらっしゃいましたら、時間はかかるかもしれませんがやってみようと思いますのでお声掛けくださいませ(笑)
 ですが、技を考えているときは、「あのシーンのセリフは使えそうだな」「このキャラソンの歌詞は技に出来るんじゃないか」と、とてもわくわくしながら作っていたと記憶しています。
 今後も普通のssはもちろんのこと、このようなお遊び的なssも書いていければと思いますので、皆様お付き合いいただけると嬉しいです。感想等もいただけると非常に励みになるのでありがたいです(切実w)
 それではまた、次回のssでお会いしましょう!


                             2022年2月 say

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